特集の趣旨・概要(豊田兼彦)(特集:ケーススタディで考える特殊詐欺)
特集から(法学セミナー)| 2019.11.14
◆この記事は「法学セミナー」779号(2019年12月号)に掲載されているものです。◆
1 趣旨
オレオレ詐欺や架空請求詐欺などの特殊詐欺が大きな社会問題となっている。そこには刑法総論・各論上の問題が多数含まれており、注目すべき裁判例も現れている。これらを扱った論文、判例評釈等も、蓄積されつつある。
しかし、特殊詐欺に関する刑法上の様々な問題をまとまった形で検討したものは、法律時報の小特集((「特殊詐欺と刑法理論」法時91巻11号(2019年10月)57頁以下。そこには、十河太朗「解題」、樋口亮介「特殊詐欺における共謀認定─実体法に基づく構造の解明」、伊藤嘉亮「特殊詐欺における承継的共同正犯と共謀の射程」、冨川雅満「特殊詐欺における実行の着手」の各論考が収められている。))を除き、これまでなかったように思われる。また、法律時報の小特集では割愛された問題もある。
そこで、本特集では、法律時報の小特集の成果を踏まえつつ、そこで扱われなかった問題を含め、特殊詐欺に関する刑法上の諸問題を包括的に取り上げ、ケーススタディの形式で検討することにした((特殊詐欺の意義と特徴については、十河・前掲注1)57頁を参照されたい。))。ケーススタディにしたのは、本誌の性格上、研究者や実務家だけでなく、学生にも親しみやすいものが望まれること、裁判例や学説の考え方を具体的なケースで使ってみたらどうなるかを試してみたかったことによる。















